無線通信基本講座 第1回 [初級編]無線通信にはどのような種類がある?

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無線通信は現代の社会インフラにとって欠かせない技術であり、技術革新が年々進む中で無線通信の種類も増え続けています。また、無線通信はスマートフォンやWi-Fiルーターなどの身近にある通信端末以外にも、IoT(InternetofThing/モノのインターネット)端末での利用が急速に増えています。それでは、無線通信にはどのような種類があるのでしょうか。

今後、各種無線通信についての基本編をシリーズでご紹介していきたいと思ますが、今回は無線通信の全体像についてご紹介いたします。

目次

  1. 無線通信の種類
  2. 各種無線通信のポートフォリオ
  3. LAN”と“WAN
  4. “Licensed系”(通信キャリア回線)

1. 無線通信の種類

まず最初に、身の回りの代表的な無線通信についてご紹介します。

  • NFC
    NFC自体は電池や電源が不要で、NFCチップに内蔵したアンテナで電波を受信した際の電磁誘導で発生した電力のみで通信が可能な無線通信です。例えば交通系ICカード等の非接触カードに用いられています。
  • Bluetooth
    機器間のデータ通信頻度が少なく、データ容量が小さいアプリケーションに用いられています。例えばワイヤレスマウスやキーボード、ヘッドフォン、スマホとスマートウォッチ等の機器のデータ連携等に利用されます。一方、画像などのデータ容量が大きいデータの通信には不向きです。
  • Wi-Fi(無線LAN)
    「無線LAN」と表現されていることもあります。インターネットへの接続が可能で、ビデオストリーミング等の大容量データ通信も可能です。一方でBluetoothと比較すると電力消費が大きいいです。
  • Cellular(LTE)
    現在、全世界で携帯電話回線として利用されている無線通信規格です。同時接続数は1平方キロメートルあたり10万台です。IoT用途でLPWAにもカテゴライズされるNB-IoT、LTE-Mや、カテゴリー1(Cat.1)~カテゴリー20(Cat.20)まで通信スピードの異なる規格があります。
  • Cellular(5G)
    LTEよりも通信速度・容量が高速・大容量で、通信速度は10Gbpsから20Gbps程度です。また、5Gの特長の一つである同時接続数1平方キロメートルあたり100万台という同時多数接続が大きなメリットとなります。一方でLTEと比較し通信距離が短く、通信範囲が狭いことが課題です。
  • LPWA
    LPWAとはLow Power Wide Areaの略で、規格の名称ではありません。Licensed、Unlicensed系と問わず、スピードが求められないけれども広域での通信が求められるという用途で利用されています。スマートメーターなどはその代表例です。Licensed系ではLTE-M、Unlicensed系では、Sigfox、LoRaWAN、Wi-SUNなどがあります。
無線規格 周波数 通信伝送速度
(理論値)
通信伝送距離
(理論値)
特長
NFC 13.56MHz 1Mbps未満 ~約10cm 交通系ICカードなど
受信側は電源不要
Bluetooth 2.4GHz ~24Mbps ~約100m 低消費電力
Wi-Fi(無線LAN) 2.4GHZ,5GHz ~46Gbps ~約100m 高速、大容量
Cellular(LTE) 700MHz~3.5GHz 下り ~2Gbps
上り ~210Mbps
~数Km 長距離、大容量
Cellular(5G)
  • Sub-6
    3.7GHz、4.5GHz
  • ミリ波
    28GHz
  • Sub-6
    下り:~4.9Gbps
    上り:~900Mbps
  • ミリ波
    下り:~12.5Gbps
    上り:~3.7Gbps
Sub-6
~約1Km
ミリ波
~数百m
大容量、超高速、
多数同時接続、低遅延
LPWA
  • Cellular(LTE)
    (主に700~960MHz)
  • サブGHz
    (主に915-928MHz)
Cellular系
  • NB-IoT(NB2)
    下り:120Kbps
    上り:160Kbps
  • LTE-M
    下り:588Kbps
    上り:1Mbps
~数十Km 長距離、超低消費電力

2. 各種無線通信のポートフォリオ

次に、それらの無線通信の最大通信速度と通信距離の関係を見ていきます。通信速度が速くなるほど消費電力も大きくなりますので、必ずしも速ければ良いというものではなく、消費電力との関係で適材適所があります。BluetoothLPWAは通信速度が比較的遅いですが消費電力は小さくて済みます。一方、Wi-FiLTE5Gは通信速度は速いもののその分消費電力は大きくなります。


※bps = bits per second

3. “LAN”と“WAN”

今回取り上げた規格の内、「LAN」、「WAN」と呼ばれる概念についてご紹介します。よく街中で”無線LAN, Free Wi-Fi”というワードを目にしますが、これらはLAN (Local Area Network) と呼ばれており、あくまでもある特定のエリア内でのみ通信可能なネットワークです。
このため、インターネット空間へはルーターなどの機器が別途必要となります。対象的に、WAN (Wide Area Network)と呼ばれ、広い範囲で構築されるネットワークがあります。
中でもLTE5GなどのLicensed系ネットワークはWAN(Wireless WAN)と呼ばれ、セルラー端末(携帯電話・スマホ等)単独でインターネット空間へ接続することが可能です。

  Wi-Fi LTE/5G (Licensed系 <携帯電話回線>)
通信距離 近距離 長距離
通信キャリアとの契約 不要 必要
ネットワークカバー範囲 LAN (Local Area Network) WAN(Wide Area Network)
インターネット接続 Wi-Fiルーターを介してインターネットに接続 単独でインターネット接続可

4. “Licensed系”(通信キャリア回線)

では、“Licensed系”とは一体何でしょうか。簡単に説明すると、docomo au, Softbank, 楽天などの通信キャリアと契約し、契約したSIMで通信キャリアの回線に接続する回線のことを“Licensed系”と呼んでいます。さらに簡単に言うと携帯電話回線のことを指します。また、現代社会で主に利用されているセルラー(通信キャリア)回線の規格はLTEで、加えて昨今5Gの利用も進められています。

さらに、”Beyond 5G”と呼ばれ、5Gのさらに次の世代の技術研究も実用化へ向けて進められています。

なお、「5G」は「5ギガ」ではなく、「第5世代(5th Generation)」の意味での「5G」です。

また、「LTE」は「4G(4世代/4th Generation)」に相当します。

このLicensed系の代表的な通信モジュールとしてTelit Cinterionというメーカーがあり、特にIoT分野では世界で高いシェアを誇っています。

LTEモジュール

LTEモジュール

5Gモジュール

5Gモジュール

WiーFi/Bluetooth(BLE)モジュール

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