クリーンルームにおける課題

クリーンルーム内に存在する粗大粒子・5μm以上の異物の管理

クリーンルーム内に存在する粒子の粒子サイズと挙動に基づく分類図。ナノスケール粒子、浮遊微粒子、粗大粒子の特性と管理分野を示す。

5μm以上の「粗大粒子」は、「浮遊微粒子」のように空間で均一に分散されずに、空気抵抗を受けながら重力沈降(Fall Out)していきます。そして、環境表面や製品に堆積(Deposition)し、表面清浄度(Surface Cleanliness)に大きな影響を与えます。
また、様々な実験結果から理解されているように、特に25μm以上の粒子や比重が大きい金属系粒子の80~90%以上は、空気清浄化システムの気流に乗りません。そのためフィルタリングでの除去がされにくいので、 一般的な空間制御技術や気流だけでは「粗大粒子」の制御はできません。

【気流の限界】

  • ≧5μmは“気中から落下・堆積する“​
  • ≧10μmの粒子は50%以上が堆積する​
  • ≧40μの粒子は90%以上が堆積する​


エレクロニクス製造現場における製品に影響を及ぼす​クリティカル粒子サイズは≧5μmです。エレクロニクス製造現場においては≧5μmの粒子堆積が​問題となります。​

クリーンルームクラスと誤認識

まず、そもそもクリーンルームとは、浮遊微粒子の計測濃度が制御、分類され、また室内における微粒子の流入、生成及び停滞を制御するように設計、建設、使用される部屋のことを指します。(※ISO14644-1より)

クリーンルームクラスは、あくまでも浮遊微粒子の濃度により等級付けされているに過ぎず、製品品質や製造施設の清浄度を保証するものではありません。そのため粗大粒子(≧5μm)がリスクならば、アセスメントすべきは運転稼働時のクリーンルームの運用品質となります。
しかし、ほとんどの企業がクリーンルームの​クラス度管理(浮遊微粒子0.1~5μm )に費用をかけ​クリーンルーム内の浮遊粒子の拡散・除去に焦点をあてて​管理をしている現状があります。

エレクロニクス工場の製造において最も重要なのは​品質問題に起因する粗大粒子(≧5μm)の管理であり、それを解決するのが汚染管理ソリューションとなります。

クラス100とクラス10000の製造環境における粒子推積率と表面清浄度の比較図。空気清浄度と製品不良率の相関がないことを示す。

ISO14644(国際クリーンルーム規格)における粗大粒子『Requirements』

※下の表は左右にスワイプすることができます

Control phase/ contaminants Particles Macro-particles Nano-particles Chemicals Micro-organisms

Requirements

14644-1,2,9

14644-1,9,17

14644-12 14644-8,10 14698-1,2

Establishment and verification

Requirements +14644-3,4,7,14

Requirements
+14644-4,14

Requirements +14644-4,7 Requirements +14644-4,7,15 Requirements +14644-4,7
Operation and monitoring

Requirements
+14644-3,5,13
 

Requirements +14644-3,5,13  Requirements +14644-5 Requirements
+14644-5,13
Requirements +14644-5

ISO 14644シリーズの規格一覧と、従来の汚染制御アプローチの問題点を示す図。左側にISO 14644の各規格が並び、右側には異物管理や空気清浄化などの従来手法とその限界が説明されている。走査電子顕微鏡(SEM)とエアボーンパーティクルカウンターの画像も含まれる。

国際規格のアセスメントを体現する機材

ISO 14644-17とVDA 19.2に基づくクリーンルームの粒子管理と測定手法を示す説明図。 ISO 14644-17には、クリーンルームに5μm以上の粗大粒子は存在する5μm以上の発塵・堆積の監視をし、クリーンルームの品質をアセスメントせよと記載されている。 VDA19.2には、VDA19.1(部品清浄検証)を運用するための管理手法VDA19.2:19.1を実現する為の環境をきれいにする管理方法と記載されている。

「製造環境と製品」における汚染リスクの監視・解析・分析

APMON

APMON

APMONは、ヒトやシステムの活動に起因する15µm以上の堆積粒子を最短5分間隔で計測します。発塵の原因となる「いつ」「どのくらい」堆積させているかをリアルタイムで監視し、汚染を引き起こす「不適切な活動」を数値化します。

APMON 技術特性

測定技術・関連規格

ISO14644-17

測定範囲

15 ~ 1000µm

測定原理

検出部の大きさが特長 レーザーホログラフィック方式

APMONの測定原理を示す図。赤いレーザービームが複数の反射ミラーとレンズシステムを通過し、中央のカートリッジに配置された6枚のスライドガラスを通過しセンサーに到達したレーザー光で検出している。レーザー光源は波長406nm、出力5mW。

センサ上部に設置されたカートリッジにレーザー光を透過させ、堆積した粒子の数や大きさを測定間隔ごとに計数します。粒子径は、回折通過したレーザー光の波形を元に粒子の形状を検出し、フーリエ変換法で回折パターンを実像化します。

APMONの本体とセンサ、ディズプレイとの接続構成図。本体とセンサの接続はLANケーブルもしくは無線で使用可能で、無線の場合にはセンサーへの給電は不要。本体とディスプレイはHDMI接続。

センサで実像化されたデータは、本体で粒子数や粒子径などに変換され、ディスプレイに表示されます。センサと本体の接続は有線・無線が選択でき、センサ専用バッテリも内蔵しているため、遠隔監視も可能です。

測定結果の表示



粒子堆積のリアルタイム監視を示す折れ線グラフ。縦軸は粒子数(0〜10)、横軸は時間(18:45〜19:30)。19:00頃に粒子数が急激に増加し、その後減少している。APMONによるパーティクルイベントの検出例として、不適切な活動による発塵を可視化している。

不適切な「挙動」を最短5分で検出
クリーン環境の汚染リスクアセスメントに最適な新しい監視技術

APMONは、粒子堆積が増加する瞬間(パーティクルイベント)をリアルタイムで監視します。これにより、ヒト、システムや清掃行為といった発塵源の「不適切な活動」を検出し、その発塵量と粒度分布を数値化することができます。このパーティクルイベントと関連付けられた活動の制御方法を検討し改善することが5µm以上の粒子を低減させる方法として、ISO14644-17で規格化されています。APMONは、空気中から落下・堆積する割合が50%以上とされる、15µm以上の粒子を検出します。




粒子の粒径分布を示す棒グラフ。横軸は粒子の大きさ(µm)、縦軸は粒子数。30µm未満の粒子が約550個と最も多く、粒径が大きくなるにつれて粒子数は減少。70µm以上では粒子は検出されていない。清浄度改善のためには、30µm以下の粒子の削減が優先される

落下粒子の粒度分布を分析・評価し、製造ラインの清浄度改善に取り組む

カートリッジ上に堆積した粒子は、粒径分布としてグラフ化することができます。15 ~ 30µmはヒトの皮膚片やセルロース片、100µm以上は衣服繊維などが要因と推定されます。30µm以下は、気流で改善されることもありますが、製造現場への「入退出手順」や「活動制限」による改善(絶対数の削減)から優先的に取り組むことが、目標清浄度を達成する近道です。50µm以上の粗大粒子が検出される場合には、「清掃を最適化」し、製造環境をキレイにする必要があります。

アプリケーション



粒子堆積率を評価し、粗大粒子の許容濃度を設定・改善するためのアセスメント図。APMONとPartSensを用いて清浄度と行動規律を管理する。

粒子堆積率をアセスメントして「粗大粒子」対策を

APMONはパーティクルイベントの検出の他、製造環境中に堆積する粒子の濃度変化・粒径分布・占有率変化などの把握や、製品の汚染に「脆弱な表面」に堆積する「粗大粒子」の許容濃度(個数 / 面積)を決定することができます。

さらに、この許容値を超えた場合、関連する「活動」や「表面清浄度」に実験的な変化を与えることで、粒子堆積率 PDR(※1)の低減につながる実証改善が行えます。

クリーンルームに関連するあらゆる「表面汚染」を表面清浄度モニタ PartSens(※2)の数値をもとに低減させ、クリーンルーム内の「行動規律」をAPMONで整備していくことが、「粗大粒子」のリスクアセスメントです。

※1 粒子堆積率 PDRについては、以下をご覧ください。
クリーンルーム内の「粗大粒子」の管理指標、粒子堆積率 PDR(Particle Deposition Rate)とは?

※2 PartSens については、以下ページをご参照ください。
表面清浄度パーティクルモニタ PartSens

PartSens

PartSens

PartSensは、クリーン製造環境のあらゆる表面に存在する「粗大粒子」の大きさと数を瞬時に測定し、それらを反射性粒子、非反射性粒子、繊維に分類するポータブル表面清浄度パーティクルモニタです。用途は、前室・エアーシャワー・床・壁・設備・装置内部の清掃効率、ウエア・グローブの清浄度管理、製品の洗浄効果など、表面清浄度に関連する様々なアプリケーションの評価を可能とします。

PartSens 技術特性

測定技術・関連規格

ISO14644-9/ISO14644-13/VDA19.2

測定範囲

非反射性粒子  2 µm ~ > 3000 µm
反射性粒子  25 µm ~ > 3000 µm
繊維     50 µm ~ > 3000 µm

測定原理



グランジングライト照射によるPartSensの測定原理を示す図。左右から照射された光が測定表面の中央で収束し、表面の異物や凹凸を強調して上方のセンサーで検出される。表面欠陥の可視化に用いられる光学的測定手法。

欧州品質規格VDA19.2「組立における技術的清浄度」に唯一記載され、ISO規格の測定原理を採用した監視機材

PartSensの測定原理は、VDA19.2の直接的/間接的測定や、ISO14644-9に記述される視斜光測定システム(グランシングライト照射式)に該当します。右図のように、測定プローブは外光を遮蔽し、測定エリアに対し左右からLED光を照射します。表面上の異物は、レンズを介し、反射光としてCCDカメラで認識され、二値化処理後、数秒で異物の最長径と個数がカウントされます。画像解析のような背景模様との単純な二値化でなく、立体的に浮かび上がった粒子だけを検出する独自の技術は、表面凹凸が少ない測定対象物に対して有効です。2µm以上の表面粗度がある一般対象物には、間接転写方式(専用テープリフトパッド)を用いて測定します。

測定方法

■ 推定保管環境:室温+10~20℃/湿度60~70RH%コンタミネーション測定の手順を示す図。測定対象物を専用台にセットし、スタート操作でコンタミを転写する。推定保管環境は室温+10〜20℃、湿度60〜70%RH。

専用テープリフトパッドであらゆる箇所の表面清浄度を測定

専用のテープリフトパッド(別売・消耗品)を測定対象表面にあて、専用台にセットします。その上に測定プローブを置き、スタートボタンを押すと数秒で結果表示します。これにより、ヒト・ウエア・・設備・部材・ツールなどの平坦でない表面の清浄度測定が可能です。清掃や洗浄など、汚染対策の前後で表面付着異物を捕集し、測定値を比較することで、その対策を評価することができます。このテープリフトパッドは、凸凹の少ない面に対して転写効率99%以上で評価されており、すべてのPartSensユーザーの機材運用を支えています。

測定結果の表示



PartSensを指で操作している

製造環境の表面清浄度を即座に評価する革新的な監視技術、
それがPartSens

PartSensは、製造環境中の表面汚染傾向を瞬時に数値化する、革新的な清浄度監視機材です。粒径取得を優先する測定レシピから、種別分類を優先する測定レシピに切り替えることで、検出した粒子を反射性粒子、非反射性粒子、繊維に簡易分類し、粒径分布ごとに表示されます。粒子分布が明らかになることで、表面の汚染状態がより詳細にわかり、清浄度改善の足掛かりを得ることができます。

 

アプリケーション



製造環境における粒子の動きを示す図。左側にはクリーンルームで作業する人々と、周囲に散らばる赤い粒子が描かれている。右側には製造装置とその周辺に存在する粒子、さらに右上には手で部品を持つ拡大図が表示されている。

清掃プログラムを最適化し、キレイを実現する

「粗大粒子」は、清掃で除去するしかありません。 製造環境と製品のクリーン化に効果的な改善の一つが、清掃を最適化することです。清掃の最適化には、ロケーション・表面ごとに「目標清浄度 = リスク粒子の個数/cm2」を設定し、その目標値と現状の清掃方法を比較・評価する必要があります。この評価にPartSensを活用することで、定量的な評価が可能となります。また、現状の清掃方法が目標に達していない場合、清掃のツール・方法・人数・時間・頻度に実験的な変化を与え、効果が得られた手順を文書化し、教育を受けた要員が実施します。この目標清浄度維持の監視にもPartSensを活用しましょう。PartSensはこの他にも、ウエアやグローブの清浄度検査・搬送パレットやツールの評価・装置の部分的発塵監視で活用され、製造環境と製品における「必要なだけキレイ」を実現しています。

Particle実測から機材販売までトータルサポート

レスターでは、インテクノス社との協業によりParticle実測からコンサルティング・機材販売までをトータルでサポートします。
また、実機でのデモ実演も行っています。その簡単な操作性や測定精度を体験希望のお客様は、下記フォームよりお問い合わせください。

対象業界

  • 電子部品
  • 半導体
  • ディスプレイ
  • オプティクス
  • フィルム
  • バッテリ
  • センサ
  • 高機能素材
  • 医療機器
  • 製薬
  • 公共施設
INTECHNOの汚染制御技術導入によるメリットを示す図表。 生産性向上・技術力向上は不良率低減となる。 環境負荷低減については、既存クリーンルーム空気清浄化設備を削減=エナジーセービング・カーボンニュートラル 社会的責任は歩留り改善・顧客からのクレーム減という自社メリット目線からエナジーセービングによる地球環境問題や人命にかかわる事業(EV車)における品質不良0という社会的責任。